我もまた東海道の雲助なんである

8月21日、銀座シネパトスにて『大魔神逆襲』(66年大映)を観る。シネパトスで企画もののレイトショーを観るのは久しぶりでは。以前のように精力的な企画をバンバン立てなくなったのは何らかの配置がえがあったからだろうか。
下北沢のシネアートンが最近になってあっけなく閉館してしまったこと。その原因が親会社のインチキ豊胸薬品販売による倒産のあおりと聞いてカクンとなったこと。それらが頭をよぎらずにいられない昨今の私に名画座という場所がだんだんその印象を変えつつあるというか正体を現しつつあるというか。大映スターとしての田宮二郎特集などというネチっこい趣味性の高い企画を立てる人物は当然そんな作品群が好きで仕方ないはずである。好きで仕方ないものを巷に紹介せずにはいられないその仕事ぶりは仕事といえど半ば趣味であり道楽っちゃ道楽である。道楽稼業においてはそれを支えるだけの資本が必要な訳で。シネパトスはレイトショー以外ではスティーブン・セガール主演のアクション映画などを上映している。そうした地味な映画に好んで集まる観客だけを相手にしていて趣味性の高い企画ものを展開できるのだろうか。多分できない。充分な資本はどこか別のところから別の手段で導入されているのだろう。
本特集のタイトルは『ギララの復讐(または復讐の夏休み)』である。この夏、『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一髪』を公開した河崎実監督がセレクトした特撮映画を集めたということだが。こうしたオマケ上映イベントが開けるほど『ギララの逆襲』が大ヒット中という噂はまったく聞かない。河崎実監督の以前の作品『いかレスラー』、『えびボクサー』のいずれもさほどヒットしたとは思えない。が、河崎実監督は現在『ギララの逆襲』をひっさげて各地の映画祭をサーキット中である。他人事でありまったく余計なお世話なのだが押せ押せの好景気にあるように見えてしまう。好きな映画を紹介して撮りたい映画を撮っていずれも実入りはちょぼちょぼのはずだ、が、余計なお世話だがそれでも痛くもカユくもなさげなのは。やはりシネパトスにも河崎実監督にもインチキ豊胸薬品のような打出の小槌があって今のところ合法的に活用されているということなのか。
田宮二郎特集みたいなネチっこい企画を期待している私としてはその状態はありがたいこと。であるがまったく手放しにありがたがっていたそれまでの私のオメデタサも処分すべきだろう。今時『大魔神』を観たがるボンクラ客の一人として自身もまた共犯者なのだと自覚していたい気もしてきたのだ。