あの頃の私に清水大敬は仲人である

以前にどこぞの古書店で入手して読まずにツンドクに置き放してあった新潮文庫君を見上げて』(山田太一著)を何となく読むかと。この作品は平成2年11月新潮社より刊行された…そうであるから今から18年前か。別にその時代に今ムクムクと興味が湧いてきたわけでもないのだが。何となく手にとった読み物や目についたものがなぜかその時代というパターンがここ最近多い。
平成2年に全体何が。何ちゅこともなく暮してはいたがなァと思いつつ大島渚が怒鳴りまくっている生テレビの録画や田島都目当てで録りためていた水曜イレブンなどしつこく観入っている。こうした番組を今と同じ四畳半でエアチェックし続けていた20年弱前の自分というものがはっきり回想できない。宮沢章夫のコラムであったか引越しの際に本棚を整理していた最中にユーモア辞典などといった見覚えのない本が見つかり首をひねった話を思い出す。バブルガムブラザーズの深夜番組の録画を見つけた時はハタとなった。バブルガムブラザーズのレコードなど1枚も持ってないが当時はタレント性にひかれてたのだろうかとも。20年近く前の自分ってほぼ他人だなと思っているとゲストはやはり田島都。
村上弘明電撃結婚してすぐ引退してしまった彼女の後々の様子は知らない。案外どこかですれ違ったりしていても気づかぬくらいすっかり家庭の主婦然としているのかもしれない、。ところで村上弘明の主演ドラマを1本だけ山田太一はだいぶ以前に書いている。親友の新妻にちょっかい出してブン殴られるのが村上弘明で殴るのは奥田瑛二だったと思うが。ラストで仲直りしながらもそれにしても奥さんはキレイだなどと村上がもらして手前まだ言うかみたいな大団円だったような。山田太一も田島都のファンなのかと納得した印象しか残っていないその2時間ドラマをまた思い出した。
本作『君を見上げて』に登場する182センチの長身グラマラスな美人OL、小坂瑛子のキャラがどうも田島都っぽいような。女優業にも結婚までは意欲満々だった田島都に頼まれる前から体温こもったこんな原作を山田太一が用意していたように思えなくもない。あの山田太一がそんな五木寛之みたいなことをとも思うがバブルに踊るあの時代のことでもあるし。しがない会社員が気晴らしに訪れた異国のリゾートホテルでハリウッド女優並の美女に向うから口説かれて恋に落ちる。てな小説がウケていたあの頃のオジサンたちもそろそろオジイサンになろうかという昨今だが。懐かしもののメモリアルアダルトDVDが今の私にはヘロインに思える。