恐らく映画版『噂の真相』なのである

9月25日、TSUTAYAで借りてきた映画『星くず兄弟の伝説』をぼんやりと観る。80年代を代表するサブカル有名人総出演といった感のパーティ映画で製作はシネ・セゾン、監督は手塚真。主演の久保田しんご、高木完が当時のアイドル並に歌って踊ってズッコケているのを本作を初めてちゃんと観て知った。低予算丸出しながらもダンスと演技にかけては皆けっこうしごかれているような。
02年に他界した戸川京子へのはなむけなのだということはエンドロールの後の別クレジットでわかった。が、戸川京子は果してこの作品を今ふたたび世に問われることをどう思っただろうか。主演の2人の間を揺れる小悪魔キャラとしていかにも80年代風のアイドル然である若き戸川京子を観て私なぞは胸がキュンとなってもよさそうなものだが。やっぱりコレは嫌がるだろう今と誰にともなく思った。そんなことを言い出したら本作に関わった人々の中で今もこれは大好きな映画だと胸を張る人物はいるのかとも。
大人の事情で嫌々引っぱり込まれた出演者も少なくないとは思う。が、同様のパーティ映画、たとえば『下落合焼き鳥ムービー』などと比べても熱気に欠けるというか。いや比べるなら『だいじょうぶマイフレンド』か。『ブルース・ブラザース』のような映画にしたかったけれど諸事情あって随分と地味なパーティ映画になってしまった感の。
今もし本作の特別上映会なぞ開いたとしてトークゲストに戸川京子はよろこんで顔を出しただろうかとも。絶対に断っただろうと思うのがマネージャー役の渡辺和博であろう。ナベゾがこうした映画にチョイ役で出演していてもさほど違和感はないと思っていた。が、はじめてちゃんと観てみるとチョイ役というほどでもない。大人の事情で嫌々引っぱり込まれたともあまり思えない。本作のナベゾがこれが意外な熱演なのだ。まだこうした仕事がふいに舞い込んだ時にどのくらい自分なりに役者したら良いものかわからずただしゃにむに演じているような。
アラーキーの『女子高偽日記』のラストの乱痴気騒ぎに乱入する糸井さん、『新宿馬鹿物語』の中で愛川欽也に「あらおすぎも来てくれたの?」と肩叩かれる酔客のオカマとして登場するおすぎのような。いや古くは中村登の『愛染かつら』の中では歌謡ショーのガヤとして風景としての北島三郎がチラリと登場してかすかな戦慄を感じたのだが。著名なあの人の無名に近い頃の姿というのが何故そのように心寒いものなのか。ともすれば彼等だって今ごろ俳優学校の校長なぞに転身してたかも知れないと森本レオを想う。