ドーナツ盤1枚分の簡易秘宝館である

7月16日、靖国神社みたままつりにフラリと。その1週間ほど前に『演劇ブック』を書店で立ち読みしていたところ劇団ゴキブリコンビナートの春公演の評とDrエクアドル氏のインタビュー記事が。不況の折、今年中の公演はあきらめかけてますといった氏のぼやきのすぐ下になぜか今後の予定、靖国神社、ゴキコン見世物小屋7月16日までなどと告知されている。が、私はそれをギャグだと思い込んでいた。
60年代のアングラ劇団のような無許可のゲリラ公演をまさか靖国でとも少し思った。もしくは靖国の敷地内であのどこまで作劇かハプニングかわからない不条理ワークショップを近隣の体育会系学生になりすまして展開するのかとも。いずれにしてもDrエクアドル氏の元気な姿を観てみたいものだとも。20代半ばには同じ弱小劇団の端役として苦闘してきたDrエクアドル氏も私と同じ66年生まれである。時代のトップランナーには程遠くとも何処をどう走っていようとその走りっぷりを見届けなくてはという気にもなり。そんな暴走公演があったら観てやろうと出かけたが。
靖国みたままつりには伝統ある純国産のお化け屋敷が参入している。そしてその隣にひねた若者向けの2号店のようにゴキコン見世物小屋は実在した。客寄せの前説をする女役者の背後の祠で金粉ダンスをするスキンヘッドの小作りなその男はやはりDrエクアドル氏であった。金粉ダンスというのは皮膚呼吸ができなくなるため制限時間内にシャワーに駆け込まないと命に関わるはずだ。
座長が来場客に命がけでクネクネ踊る見世物小屋に入るのは少し勇気がいる。中ではサーカスの団長に扮した役者が未開地から連れてきた野人の群れを紹介していた。野人の1人は20代のメスで小屋の天井にぶら下がるTバックの尻がプルルといたいけに震えている。続いて登場したモンゴルからの流民の少女も衣装をはだけての熱演だったがニプレスを付けていたのが余計ドキリとした。
映画『桃尻娘』のシリーズ2作目に登場したアングラ劇団を私は思い出していた。池島ゆたか扮する座長からのイニシエーションに身をくねらせる亜湖の姿に当時中学生の私は『映画の友』のグラビアだけで充分うろたえたが。自分がそんなカリスマになって娘ほども年下の女役者に恥も外聞も乳バンドも捨てさせることがいつかできるかとは夢想しなかった。Drエクアドルの野望における女役者の乳バンドなぞそれはちっぽけなものかも知れない。が、いずれもっと超ド級の何かを持った次代の若者がゴキコン目指して上京しないとはと、人いきれに思った。