知らぬ同志が付き合い果てたんである

 3月28日、神保町の立ち食いそばの店にてミニ天丼セット四百九十円也をずるずるとかっ込む。ここは最近よくある気持ちグレードアップされた木椅子に座れる特選だし使用の立ち食いそばの店だ。財布の中身がマックス淋しい時はこの種の店を利用することにしている。で、やんわりと淋しい時は本当の立ち食い。駒込駅のガード下に今だ残る戦後のバラックまんまの掘っ建て小屋のリアル立ち食いそばが良い。これは長年の貧乏暮らしから得たセオリーである。
 最早逆立ちしても鼻血も出ない時に戦後のバラック入っちゃダメ、ゼッタイ。そのまま予想外の出費に蜂の巣状態に追い込まれ数日後には自家製うどんの汁のみをすする所まで落ちぶれた体験は数知れずである。このままではどん底という時にはどん底のやや上、ワンランク上のどん底に陣取ることをお薦めする。この春新生活を始める若者達へのメッセージ、これはメッセージである。  ま、今時の若者は私のごとき仮説住宅から新生活スタートさせないだろうが。こんな「男おいどん」の世界ねえ、今時。実は松本零士が不遇時代を過ごしたおいどんアパートは御近所にあったらしい。周囲の商店街のアーケードには銀河鉄道の主要キャラの壁画が寄贈されている。故郷に錦だね、いいねこりゃか何か阿呆面でそれを見上げる私の下腹部に新世紀産サルマタケが。個人的には銀河鉄道よりハーロックよりおいどんの最新作が観たい気がするのだが。強引な世界展開でハリウッド版のおいどん観たいがな。ダスティン・ホフマンが絶賛とか起こり得ると思うが。小津映画とか禅の精神とか勝手にだぶらせたりして。
 さて、ワンランク上の立ち食いの後はアテネフランセにて特集上映現代日本映画・高橋洋アメリカ刑事」、「ソドムの市」を観る。二作ともナンセンスギャグ連発のSF活劇で存分に楽しめた。が、「ソドムの市」に私が近所の商店街でよく見かける百円あんまの姿が。チンギスハーンな風貌の悪の手先役で出演している。台詞はほとんどないがゾンビのごとく襲いかかったりショック死したり結構な熱演。でも基本的にはガセ。でも熱演。久しく観てないゴキブリコンビナートの舞台を思い出した。ゴキコンの役者なのか。ゴキコンを意識した百円あんまの大熱演なのか。何やら見直したっちゅか見損なったっちゅか。ま、今度一つさすってもらいましょうか百円あんま。映画観ましたよとは口に出さずともなんとなく伝わってしまうような気が。行きつけの銭湯でも度々顔を合わせる彼とはこれで裸以上の付き合いか。ちゅす。