ロングおじさんにダマされたんである

3月7日、近所の激安ビデオの店にて『ヘリウッド』を八百八十円で入手。82年シネマプラネット制作。当時流行だったパーティー・ムービーというか。斉藤とも子、羽仁未央佐藤B作篠原勝之、小暮隆生と当時有名、後に有名になる面々が手弁当で盛り上がっている。
ようにも見えるが後半にもなると羽仁未央などいい加減やってられない風にふてくされていく。友達の付き合いで嫌々観せられるアングラ演劇とほぼ同レベルの俗悪SFドタバタ喜劇というか。二十余年前には学生たちが創る舞台ってなぜかおしなべてこんなものだったなと。宇宙からのインベーダー軍と闘う美少女探偵団の脱力ギャグ混じりのスラップスティック寺山修司みたいな世界観をふてくされ気味になぞっているような。インベーダー軍の中には渥美清の付き人だった石井愃一もいるがさすがに元気いっぱいで演じきっていて感心した。
そして本作の主要キャストの中で一番複雑な様相で出演しているのがアップル少年役の小暮隆生である。主役の遠藤賢司演じるロックスター悪漢ダンスにスカトロプレイを強要される美少年である小暮隆生は本作を観るかぎりでは悪い大人にダマされた目立ちたがりのただの高校生にしか見えない。しかし本作で仕込みとはいえエンケンのウンコをアーンさせられたことが小暮隆生少年の心にウラミハラサデ的な土性っ骨を育て始めてしまったのではないか。
本作『ヘリウッド』はセコハンショップでは二千円弱であったり百円でワゴンに放り込んであったり寝踏みはまちまちだが。ただの高校生だったデーモン小暮エンケンに責められてるシーンが見ものと思うヤングギター世代もパチロク世代ももうあまり熱心にこうした文化に触れたくないのではないか。何かこう空しいのである。エイティーズ回顧またも失敗というか。この角度でもないと。で、この80年代がらみのパーティー・ムービーが全然パーティーらしくないのは音響効果の問題ではないかと。何が空しいのか何がセコイのかと言及してみるにやはり音かと。
今現在本作のライブシーンのような場面が映画に出てくる時には屋外から小屋の中に入って行くと壁伝いに演奏音が反響してくる感覚までが体感できる。『ヘリウッド』のライブシーンは全然ライブな感覚は伝わらない。現場では必死で盛り上げようとした分仕上がりのノッペリ加減には皆ガクンとうなだれたかもしれない。いや当時はメジャー作品でも音響に関してはこんなものだったはず。このノッペリ加減の音響がビートルズのモノ盤並みにもてはやされる日々もそう遠くないのか。