ザ・ヒューズのデビュー盤のみを

5月15日、今のところ自宅周辺にはここ1件しかない大変ありがたい古書店、その名もジパングに向かう。店内には子連れの主婦が2組と男子高校生が2名、女子高校生が1名それぞれコミック棚やゲーム棚をウロウロしている。私も何となくCD棚に陣取り掘り出し物をと思ったが。前回見つけたイカ天ホコ天バンドの投げ売りワゴンは目ざとい先客にすでに掘られていた。ザ・ヒューズのデビュー盤のみを残して。もう掘るところないじゃんとむくれつつこれを全曲レビューしようかとマゾヒスティックにも。が、よくよく物色してみるとプレイグスの『センチメンタル・キックボクサー』が。96年に発表された本作を私は当時入手しかけたような。先にインディーズから出た『ビーチライダー・77』をジャケ買いして気に入っていたのでおっこいつらメジャー行ったかと。お気に入りのバンドをこいつら呼ばわりする若者感覚が当時はまだ。こいつらの魅力はギュンギュンうねる疾走感あふれるギター。あれかクラプトンがチャ―みたいなと言われれば全然違うとムキになっただろう当時は。純文学風のしっとりとされどネバつかない程度に濡れた歌詞が好みで。おゥあれか岸田智史尾崎豊みたいなと言われれば全ッ然違うと机を叩いただろう当時は。今改めて聴き直してみるとライブハウスから出られないミスチルというか。ミスチルがまだライブハウスの注目バンドだった頃にシティロードの小記事にて最近はチャゲ飛鳥なんかもお勉強に聴いてるけど案外いい曲書いてるんですよねというようなことを語っていた。大好きなチャゲ飛鳥をけなされたようで私は、いやチャゲ飛鳥なんか好きじゃなかった私も何を生意気なと思ったが。本作を聴いているとどうもミスチル路線で一発食おうか止めとくかといった迷いがバンド側か制作側にあったよう。英語詩も難なくこなすが昨今の半分洋楽スタイルの若いバンドとはそのこなれ振りが違うような。まだ何やら戦略めいた仕掛けていく英語詩というか。国産初の逆輸入メタルEZOなど思い出す凱旋ペラペラ節というか。当人達はそんなあの手この手で前に出たかったのかと。本作に収められた『サンキュー』の中の一節、「もう一度名前は忘れたけれど あのパイを焼いてよ またこのベランダで伸びきった僕の髪を切ってよ Thank you」というくだりに当時の心境が残っているような。『ビーチライダー・77』の方が今聴いてもいい。今家で聴いてる。ミスチル?全ッ然違う。こいつら何か違うのよ、このMA−1の着こなしも。