しかしあの山咲小春はどう見ても

4月29日、上野オークラ劇場にて『美女濡れ酒場』(OP映画)を観る。前回上野オークラを訪れた際の予告ポスターとチラシに本作を見つけ主演、山咲小春というクレジットにひくとなったのだ。山咲小春って90年代半ばに活躍した人気モデルじゃないかと。まだピンクで仕事を続けてたなんてこれは必見とその時は思った。で、ピンク女優、山咲小春目当てで再び上野オークラを訪れたわけだが。本作『美女濡れ酒場』にキャバレー歌手役で登場する山咲小春はグラビア時代より幾分ふっくらしてるなと映画の冒頭までは思っていた。しかし以前に新宿ニューアートでストリッパーになってた90年代半ばの人気AV女優の憂木瞳を観たときも同じような印象だったしいろいろあったのだろうと納得してしまった。が、それにしても目鼻立ちだって随分な厚化粧とはいえ別人のようだし声だって以前にバラエティ番組で実家の母親にお墓をプレゼントしたイイ話をしてたコロコロ可愛らしい感はない。最近の岡本夏生やカムバック後の内藤やす子にも似た場末のくたびれたホステス風だ。それはそういう役柄なんだしとその時はまだ納得していた。が、そのうちカラミが始まるとどうも変だなと。往年のプロポーションの欠片も残らぬドラえもん体型はまだいい。それはいいとしても釣り鐘型の豊満なバストとCDシングル大のトップもそこにはなくやはり場末のホステスまんまのしょぼくれ乳が。92年プレイメイトジャパンのおっぱいとはにわかに信じがたい。が、映画そのものはピンク大賞作品賞だけあって美術も演出も低予算にもめげずセコくない意欲作。流れ者の男が自殺未遂をはかったビルの酒場の主人に拾われ店を任される。そこに現われた山咲小春演じる歌手と恋仲になるが実は彼女の正体は歌手デビュー直後に投身自殺した女の亡霊だった。と、いかにも小劇場サイズのアングラ劇を上野オークラのような小屋で観られるのは妙に得した感じ。しかしあの山咲小春はどう見ても替え玉じゃないかいくらマイナーなグランドとはいえそんなことが許されるのかと劇場を出るまで本気で怒っていた私だった。が、帰りに寄った神保町の古書店で見つけた『月刊ザ・テンメイ』の表紙に山川小春の姿を確かめて改めて納得した。山咲小春は初めから山川小春にぶつけたフェイク女優だったのだ。新田恵美みたいなもので似てなくもないがと苦虫半分で楽しむべきもの。それを全編だまされていた私は案外しあわせ者なのか。今度山咲小春のクレジットを見つけたときはもう何も考えずにあのくたびれた胸にこそ飛び込みたい。