が、今になってあの世にもサウンドが

5月17日、BABYMETAL のアルバム『METAL RESISTANCE』 (トイズファクトリー)を聴く。FMラジオにて全米40位内に入る『スキヤキ』以来の快挙と紹介された本作に少なからず反応した私はその足でCDショップに走った。私がそれ以前ショップに走ったのは椎名林檎の『本能』でありその前はピンクレディーの全盛期の何枚か。最早そんな衝動は起こるまいと思っていたものがあっさり起こってしまった。本作はベビメタの二作目にあたる。BABYMETAL なるアーティストは基本的には三人組のアイドルグループである。これにプロデュースとマネジメントを手がけるKOBAMETAL率いる神バンドがバックを務め更に演出振付家、MIKIKOMETALがビデオとライブの振り付けを担当する複合プロジェクトがBABYMETAL 。サウンドは勿論メタル。いわゆるジャパメタであり汗と涙の青春賛歌の詞世界はまるでアルフィーアルフィーは近作で何故かGSに回帰してみせたがベビメタの成功をどう思っているのか。過去の自分達のサウンドが今や世界的にきてる音楽と評価される際中も先人達へのリスペクトは忘れない姿勢はさすがの重鎮ぶり。であるがそもそもベビメタの最終ミッションこそが80年代のジャパメタを世界市場に認知させることなのでは。本作収録の『シンコペーション』などは典型的なジャパメタ。つんのめり気味に疾走するビートにギターのシンコペーションがピロピロと果てなくからむあの苦手な向きにはまったく苦手な曲展開。私も実は苦手である。が、今になってあの世にも奇妙なサウンドが世界を掌握し始めた事実が面白いんである。今一番共演してみたいバンドはメタリカさんですなどとしれっと語ろうとそれが決して雲をつかむ妄想ではなくなっている現実が痛快なんである。『スキヤキ』以来の快挙ですなと溜め息混じりに語る昼間の平和なFMラジオパーソナリティはそれがやらしい話どんな見返りを生むか想像してやる気が失せたよう。かって私はアイドル好きの同人と黄金の70年代を語ると終いには必ず「それでもピンクレディーはプール付きの豪邸に住んではいないんだよな」と飲めない酒に溺れていたが。BABYMETAL にはいっそ重戦車付きの豪邸に住んでもらいたいと願うもの。プロデュース陣とアーティスト陣では父娘母娘ほどの年齢差がある関係図はまるで元国体選手の両親が自分達の娘をオリンピックに送り込むよう。汗と涙の青春賛歌は夢見る昭和40年代男にとって予想もつかぬ秘孔であった。