エレクトよりもエレクトリックである

うん、夏目雅子和田勉の口調で)。3月17日、仕事帰りに池袋東武の中をウロチョロ。ひょっとするとヤバイかも知れぬボリュームの便意を抱えて。中年とあっさり呼べる年齢になってからこの天下の往来でふいに失禁しそうになる例が珍しくもなくなった。実際失禁してしまった例も別に中島らもを気取るわけでもなく何度かある。
だいたい昼下りで初めはちょっと下腹部にムズっ気を感じて何となく巨大デパートの中にトイレを探しに入る訳だ。そして一階二階と手近なトイレの個室を訪ねるもことごとく使用中というパターン。誰しも体験済みかと思うが失禁という最悪の結末を何度か知ってしまった私の体とその霊感にはあっ、これはもう失禁コースだとトイレをねり歩く途中で気づくことがある。今日もこれはもう失禁コースかとも思えたが。
過去の失禁例のように近くに河川があったり森深い公園があったりしてこうなりゃ俺は都会のロビンソンクルーソーと開き直って汚れたパンツを手洗いするという手段が使えるかどうか。ウンコまみれで街の雑踏を小走りに逃げ去る時のこちらの孤立感と裏腹の周囲の人々の絶対的無関心振りのあのコントラスト。白竜の『誰のためでもない』が頭のなかで大音量で鳴り響いているようなあのヤケッパチ感。あれ久々に体感してしまうのかと覚悟を決めかけたところで難なく空室のトイレをひとつ発見した。
無事用を足した後に何となく五番街へ。五番街とは東武御用達の結構歴史あるレコードショップ。80年代には輸入盤や国内インディーズにも随分力を入れていたなかなかゴツイ店であった。ちょうど池袋シネマロサ・セレサが同時期には国内外のカルト映画の玉手箱だったように。そしてほぼ同時期にしてそうしたサブカル色の抜けたフツウの娯楽スポットにどちらも変化していった。経営のことはわからない二代目が趣味性の高いというか趣味性だけの店作りをスタッフの力を借りて乱雑展開を楽しんでいた時代があって今はそれが成り立たなくなったというだけのことか知ら。何だか淋しい。今が?昔が?今も昔も淋しいのか。
淋しい男だ俺ァか何か鼻水すすり上げつつCDを購入。『ベル・カネボウ・ヒット・ソングス』を。75年から88年までのカネボウ化粧品キャンペーンソングを集めた編集盤だ。一曲目のティナ・チャールズの『Oh!クッキーフェイス』がどうしても聴きたくなってつい。ジャケ写の夏目雅子もいい。当時小学生の私にはまだそれをどうすればいいのかわからなかったがつまりはその未形成な性欲はそれゆえ無限の力を内に秘めていたような。