レーニン俳優が私のレーニンである

映画『実録 連合赤軍あさま山荘への道程(みち)』を4月27日にテアトル新宿で観た。この場で取り上げたつもりになっていたが取り上げてなかったので。別にお前ごときが取り上げようが取り上げまいが連赤の評価に何の影響があるかいと言われる前からわかっているが。昭和40年代生まれの人々には懐かしいタッチの映画であったなどとトンチキな感想くらいしか語れないのだが。
懐かしいとはその画質の寒々しさ。お昼のワイドショー「女の事件」やウィークエンダーの再現フィルムを思わせる手弁当感覚のスペクタルというか。見たこともない役者たちがゲリラ撮りもしくは低予算丸出しのセットの中で熱演する姿とそれらが実在のリンチ事件の実行犯をなぞった人形浄瑠璃であること。そのことに生々しい、リアルであるということだけで興奮している自分にどうかと思う点もあり。
先に公開された連合赤軍を扱った劇映画の出来に不満たらたらであった若松孝二監督であるから本作こそが本物の人形浄瑠璃であるといったところか。事件に関わった当事者たちと付き合ってきた監督だけが撮ることができた看板に偽りなしの実録モノである本作が『突入せよ』と同時期に公開されていたら80年代の全共闘ブームに似た現象が起きていただろうか。
当日会場には若松監督と足立正生ともう一人「酒場で知り合った飲み友達の」西部邁が登場。トークショーの中で西部氏がちょろっと告白めいた話を始め私なぞはヒクッとした。10年前くらいか路上で共産党員と名乗る7〜8名の男達に囲まれリンチって程のモノじゃないが見舞われてしまったとか。
公衆便所に押し込まれたが夏場で便器はカラカラに乾いていたし設置したばかりの便所だったからまだよかったとか。あの時もしあの公衆便所がボロボロで便器も汚れ放題だったら「今ごろ物言えなくなっていただろうと思うんですよ」としみじみ語る西部氏になるほどそんなことがと感心してしまった。が、10年前ってつい最近じゃないかとも。そのころ氏にそんなトラブルが起きていたことはどこにも公表されてなかったしする気にもなれなかったのかもしれない。似たようなことがほとんどの知識人にはいつの世も日常茶飯事なのかもしれないと今更ながら気づかされたり。
連合赤軍そのものにはまったく共感しないがこういう映画を今つくるこの人にはもう褒め殺しのようなことしか言えないくらい敬服すると語る西部氏の隣で静かに笑っていた若松監督はとても元気そうだ。同席していた足立正生氏も同様に表現という手段がなければ三面記事を飾る狂気の老人かも知れずそれも含めて敬服す。