川越美和はもう戻れないんである

 映画「光の雨」(2001/シネカノン)を観た。(以下ネタバレあり) 連合赤軍浅間山荘事件についてもう一度一緒に考えてみる映画なのだなと私は感じた。ドキュメンタリー風であっても全て作劇で、演者の本音のように語られる台詞も恐らく台本に細かく指示されたものだろう。昔はこうした半分ディスカッション半分やらせなドラマは随分あった気がするが今こうした手法は逆に目を引く。
 「親父に借りてきた」黒ヘルメット持参で撮影に挑む若い役者と監督である高橋伴明も実際親子位の年齢差であろう。映画の中では大杉漣連合赤軍を知らない若い役者陣をどうにか引っ張って撮影を続けるその世代の監督を演じている。が、大杉漣演じるこの監督は撮影中に現場から消える。
 連合赤軍の映画を撮影する監督の元に応援のファンレターを装った一枚のハガキが届く。そのハガキには“裏切り者のお前がこの映画を撮る訳か”といった意味の込められた短歌が示されていた。    自分が学園紛争に関わっていた頃に保身から仲間を売った過去を知る人物が、まだ世間には居る事に気付かされた監督はたまらず現場を逃げ去り、代行としてメイキングを撮っていた若い監督と残された役者陣が撮影を続行するのだ。ここまでは何となく奥歯に物がはさまった様な展開で恐らく実際の撮影にも似た様な横槍が入ったと思われる。ラストシーンでは無事にロケを終了した役者達が雪山で無邪気に雪合戦を楽しむ様子に原作者の立松和平が結びのナレーションを語る。結んじゃいけないのでしょうけど的ニュアンスであの独特の語りである。かなり結んでいる。
 しかし最後は明るく無邪気に雪合戦を楽しむ役者達の中で一人だけ何やら浮かぬ表情を見せているのが川越美和である。女闘士の一人として革命に加わりながら女を捨ててないだろうお前はという理由から、集団リンチの標的にされ死んでいくのが川越美和の役所である。
 それだけでもかつてのポスト後藤久美子である川越美和にはヘビィーなのに本作ではオールヌードで駅弁ファックまで演じるという挑戦者ぶりである。川越美和は勝負の構えである。川越出身の川越美和川越市民一丸となって応援してやって欲しいものである。エイチも川越在住だが川越美和には余り興味が無いようだ。が、私が本作の話をするとヌードで濡れ場か、じゃあ観よといった反応であった。
 世の中そんな物だと川越美和自身悟りきった上での体当たりの演技なのだろう。体当たりの演技という形容を本当に久しぶりに思い出したのだ。連合赤軍より川越美和のこれからについて一緒に考えさせられる映画だ。