風コーラス団は元々ポプコンの裏方


8月31日、風コーラス団の『愛色の季節』(13年 SOLID RECORD)を聴く。75年にヤマハポプコンから誕生したソフトロックバンドでプロデュースは細野晴臣と銀座山野楽器のポップには書いてあったがどうも編曲と楽曲提供に加わっただけのよう。一時一緒に仕事をしただけで細野ファミリーとはまた異系の風コーラス団は当時まったく売れなかったらしい。ティン・パン・アレイがレコーディングに参加というお宝感はおいて聴いた感想はこおろぎ73とサーカスを混成させたようなハーモニーの喫茶ロック。風コーラス団は元々ポプコンの裏方を手伝っていた玄人集団だとか。ポプコンにまだ譜面だけで応募する窓口があった頃にそれを審査会場で演奏するバンドのメンバーが風コーラス団の前身。後に第5回目のポプコンに出場。キャニオン賞を受賞しデビュー。というエピソードに私は長い間売りあぐねた要因はメンバーのルックスではと思った。ジャケ写にも歌詞カードにも顔写真一枚登場せず解散後のメンバーの足どりも作編曲家にCM音楽とほぼ裏方に舞い戻っている。演ってる音楽と演者の佇まいに菅原洋一南佳孝以上のギャップがあったなら逆にそこを売りにと周囲は考えなかったのか。同年に入賞したのはNSP、小坂恭子、高木麻早だというから決してアイドル人気に押されていたわけではない。むしろ小坂恭子なんかアンチアイドル派に属するのでは。それよりまだひどかったのか。デビューシングル『愛色の季節』の作詞は松本隆。職業作家としてはまず期待株の頃。その後ヒットメーカーになる松本隆と表舞台を去ったメンバーの作詞法の違いはと歌詞を読み込んでみると。『愛色の季節』の最後の一行は“あなたの好きな色に変ってみせるきっと”とはっきり結ばずブツ切れに終わる。メンバー作詞の「僕と魔法使いのおばあさん」は“すべてのことがたのしくなるだろう”と幕切れ感がある。自分からは決して幕を引かず次回予告調のエンディングでゆるく結ぶのがヒットメーカーの性質か。松田聖子の一連のヒット作の結びは『白いパラソル』の“あなたを知りたい愛の予感”などいずれもゆるい。すでにさんざんヒットを連発しながらまだ予感。常にに過程であり続けるその性質がプロフェッショナルで風コーラス団は高校野球だったのか。それを言うなら数多の喫茶ロックは高校野球でありどちらも共に70年代の終わりまでがまだ商業ベースに飲み込まれずに輝いていたような。風コーラス団のジャケットワークもいっそ水島新司にまかせてみればよかったのでは。