あの日はブルースで当分居留守である

11月1日よりシネマート新宿にて開催される「GS I LOVE YOU・グループサウンズ映画特集」を観に行こうかどうか。同特集は11月15日より全国ロードショーされる映画『GSワンダーランド』の前座的に企画されたもの。架空のバンド“ザ・タイツメン”が68年の歌謡界を駆け抜けるGSメルヘンの前振りに選ばれた本家GSはザ・スパイダースザ・タイガース、ザ・テンプターズの代表作5作。
グループサウンズ映画と一口に言っても様々であるが今回はわりとベタなチョイスかと。あまりクセのある作品を並べてもメインの『GSワンダーランド』がかすんでしまうということか。本田隆一監督は2001年に『東京ハレンチ天国さよならのブルース』という半分インディーズのような小品のGS映画を発表している。こちらも当然架空のGSバンドが60年代末に活躍する映画なのだ。が、『東京ハレンチ〜』の場合はそれが正しく60年代末なのかはわからない。
わからないがフィルム状態を意図的にくたびれさせたりしていかにも場末の小便映画館(も、当時すでに絶滅しつつあったが)でかかるGS映画のテイストを出していた。つまり観たこともない超カルトGSバンドの当時ですら誰も観なかった主演映画のようなフレームを作りその透き間に現在只今がこぼれ落ちてくるような。あったようでないような過去とただそこにある現在の交差に私はもの凄く新しいものを感じてわなないた。01年の中野武蔵野ホールでのことでありその時会場に観客は私一人であった。
それでも充分シビれた私はモギリに飾ってあったサントラ盤を入手した(何故パンフを買わずにサントラを?)で、会場を後にしようとした時に出入り口で公衆電話をかけているクレージーキャッツのような玉虫スーツの男に気づいた。「参った、参った。俺はもう中野は嫌だよォ」などとグチっているこの男はもしかしたら監督なのかしらとも思った。その後、アンタッチャブルがお笑い界に急浮上した時にもしやあの男ではと思えなくもなかった。が、違った。
今秋、『GSワンダーランド』の紹介記事の中でフラワープリントのシャツを着たモミアゲの似合う年若の男(実際まだ30代始めだ)が本田監督と知ってやはりあの時の玉虫男はと思った。と、同時にあの時監督はまだ20代の前半だったのかとおののいたり。高校時代にカルトGS小ブームに出逢いずっとGSネタの映画を撮りたかったという監督だが私のような者からすればもう男の晴れ舞台の昼の部と夜の部を30代にして演じきった千両役者か。まず誉め殺す。