ナンシー・アイ・ラブ響く夜である

 大体リリー・フランキーなんて今が正にわが世の春である筈なのに何故ああも酒に溺れ続けるのだろうか。その辺のことを私なりに推測してみようかと企んでいるうちにナンシー関が急死してしまった。

 やはり最前線で発言するコラムニストにかかる重圧たるや相当なものなのだろう。面白くもカユくもないタレントは雨後の竹の子のごとく発生し続けるのに対しナンシーはただ一人である。そして面白くもカユくもないタレントにナンシーがカッターを抜かなかった事はそのタレントの芸をナンシーが認めちゃったかもと世間は思う。いや誰もそんなこと思いやしないかも知れないがナンシーは多分そんな心境のままだったのだろう。戦死である。他の誰もナンシーほどシリアスに鼻白んではいなかった。面白くもカユくもないテレビに正面から批評を浴びせるナンシーを痛快には感じていても次のリアクションにとまどっていたと思うのだ。一緒に立ち上がろうではないかと仮にナンシーがアジリもしたなら立ち上がっても良い。しかし立ち上がってそれからどうしたものだろう。面白くもカユくもないタレントに仕事を与えるなというわけではありませんというような発言をナンシーは残している。面白くもカユくもないテレビの前から離れない貧民一人一人をコキ下ろしたいところなんだがなとナンシーは言いたかったのか。そして晩年(に結局は相当してしまうここ数ヶ月)は闘いのリングをテレビ界から政界に移動し始めていた。ナンシーの実力ならこれまでのどんなパロディ作家よりも次元の高いポリティカルコラムを読ませてくれたかもしれない。

 ところでナンシーは趣味のGSバンドでベースを担当していたという。GSとひと口に言ったとて色々ある。が、多分私の推測では白鳥、潮、王子様の女のコ向きGSより野良猫、横浜、ヘルプマシーな男のコ向きGSを志向していたと思う。でもミリタリールックはギャグで特注してたり。今、私は版画家、コラムニストとしてのナンシーより日曜ロッカーとしてのナンシーの横顔が知りたいんである。ロッカーナンシー出て来い。モア!