友情出演はさじ加減が肝心である

 団鬼六第一回監督作品「紅姉妹」をラスト30分くらいからブラリと観る。と、SM有りスカトロ有りのこのハードポルノ作品のエンドロールに友情出演 石立鉄夫の文字が。石立鉄夫が団鬼六と友人関係にあっても全然問題はないだろう。が、石立鉄夫がスクリーンの中で緊縛された女を毛筆でコチョコチョしながらイチモツを引っぱり出して強要フェラ。考えただけでも混乱する。70年代から脂の乗りきった暴行魔としてその世界を賭け続ける港雄一ならまだしもあの石立鉄夫が。

 たまたま団鬼六とお友だちだからといって石立にそこまでされたら私は嫌だ。かつての日本テレビホームドラマのドル箱スターが今は場末のポルノ映画館でイチモツを振りかざしている。今やそういう時代だと説かれても私は首を横に振るだろう。カラミ相手は杉田かおるですよとさらに悪魔な誘い水を撒かれてもだ。

 あの石立鉄夫が今になってハードポルノに出演している。それだけは事実なのだなと納得してボンヤリと休憩時間を過ごす。さてもう一度映画を頭から観ようか止めようか心中複雑であった。中高年カラミ男優となった石立をしっかり見せつけられてから家に帰って「気まぐれ天使」のサントラをいつものように愛聴できるか。できねえ。もう二度と石立を気のいい兄貴だとは思えない。オッチョコチョイが玉にキズだけどハートにゃでっかい夢があるんだあの人などとは尊敬できない。石立のそんな最低な姿を見届ける必要があるのか。何かどうしょうもない事情で引き受けたワースト仕事で本人も気に病んでいるのだ。ファンなら目をつぶるのだとも思った。

 が、ドギマギしながら冒頭から映画を観直して私は座席からズリ落ちたのだ。石立の出演シーンはわずか1,2秒。台詞も役名もないクラブの酔客の役であった。主人公の暴行魔が根城にしているクラブの様子をカメラがパンする。その中にニコニコしながら酒を飲んでいる一人の親父。それが石立である。私は半分ホッとし半分腹が立った。しかし友情出演とは本来こういうものではないか。ポルノ作家の友人から初監督作品に誘われた往年の青春スター。友だちだもんやらせてもらうさと気軽にイチモツを出されてはかつてのファンは困惑するだろう。石立はわかってくれていたのだその点を。これで安心して「雑居時代」も再観できる。「おくさまは18歳」を今一度観ても決して胸を痛めることはないだろう。サンキュー石立と言いたい。あんたのハートにゃ今もデッカイ夢があるんだよね。イチモツだって本当はデッカイんだよね。