ゆとり教育世代の恐怖PTAたちである

8月18日、ラピュタ阿佐ヶ谷にて『恐怖女子高校 暴行リンチ教室』(73年東映京都)を観る。監督、鈴木則文。主演、杉本美樹。タイトル通り不良女子高校の中で教員たちは学内の権力を生徒らは不良のメンツを争って血みどろの抗争に明け暮れるといった内容のライトポルノだが。
この種の東映作品に必ず出演する山城新伍は本作には登場しない。画面には登場しないのだがどうも。どうも若い女子アルバイトにしつこく追っていた現場主任が割とあっさり転出していった後のようなザートラしい和平感が背景にあるような。現場にはもう来ない、来る必要もなくなったというだけではないのかと。大人って汚ねぇよなと。
汚ねぇ大人陣の代役には金子信雄名和宏田中小実昌などが登場する。田中小実昌たこ八郎と共にストリップ劇場で演じていたミニコントというものを一度は観たかったなと私などは夢見ていたが。実際観に行った人々の証言によればいくら友人でもあんな素人芝居を平気で人にすすめるなんてと不評だったらしい。
本作で不良女子高生らにだまされて下半身ネタをスクープされパンツ一丁でヒィヒィ逃げ回る親父役の田中小実昌を観てやはりそういうものだったのだろうと思った。が、映画の中では打たれても踏まれても最後は屈辱を跳ね返し不良のメンツを守った杉本美樹が本気で刺し違えるつもりだった人物は誰であったか。そんな人物が存在しない訳がないギラギラした眼光は鈴木監督が精魂込めて練り上げ煽てあげた産物なのか。
ポルノだろうと学園コントだろうと映画は映画、スターはスターなのであり高倉健と対等なのだと叩き込まれて伝説のスケバン女となった杉本美樹はまだいい。いや、杉本美樹を囲むサブキャラ女番長たちもまだいい。ボルネオ・マヤで寝ても覚めてもといった暴走男子高校生も今や長と呼ばれる立場にあるかも知れず。
本作で私が気になったのは恐怖女子高校の一般生徒のガヤの少女たちの表情の圧倒的な暗さである。ポルノ映画に出演することは売春婦と呼ばれるも同然といった成人映画の創成期からはもう随分たっているはずである。が、そうした創成期の女優に比べてもまだまだ暗い。恐怖女子高校の中で血みどろの抗争を続けるいかなる立場の人間よりも一等暗い。
ポルノだろうと学園コントだろうと映画は映画である仮設住宅的殿堂の中でも最下層の流民であった彼女たち。彼女たちにも山城新伍に逢わせてやろうかなどと近寄る現場主任が当時いなかったとも。彼女たちにですか、幸せになってもらいたいですと千石イエスの言葉を。