攻めの経営学ここにもである

 一年以上もこうして寄稿しつづけて言うのもなんだが家主のエイチの精力的な古書店経営にはヘキエキ。大体古本屋というものは余りやる気があっちゃいけないのではないのだろうか。一日のほとんどを和系のデブ猫をヒザに乗せたまま、12インチの卓上テレビをながめて過ごすものなのではないのだろうか。子供なんか作っちゃいけないし、エロ本を取り扱いつつも全くその方に関心がなさ気でなきゃいけないのではないだろうか。石油ストーヴで自家製の餅を繰り返し焼いているが誰か食べるのかは不明でなけりゃいけないのではないだろうか。でも確実に数は減ってなきゃいけないのではないだろうか。当店のおすすめの1冊という意味なのか、有名女優の一昔前の写真集がビニールひもで天井から吊るされてなければいけないのではないだろうか。その有名女優は多分風吹ジュン原田美枝子あたりでいずれにせよ週刊プレイボーイがらみの集英社刊ではないだろうか。そしておすすめの割に美品とは呼べぬ状態なのではないだろうか。余り目立たぬ棚にはエロテープもそろってなきゃいけないのではないか。そのパッケージが全て手書きでどうやら店主の字ではと思わせるのではないか。試しに買ってみようかと思ってもレジに差し出す勇気がもてぬいかがわしさが手書き効果にはあるのではないか。数年前に訪ねた時は店番もしていたおばあちゃんが痴呆化してたりするのではないか。買取じたいがもう面倒そうで露骨に嫌な顔をするのではないか。それじゃ一体どうやって食ってんだと思わせるのではないか。そう思ってると偶然街頭で宝くじを売ってる店主を見かけてしまうのではないか。目と目が合っても他人のふりをかましてくるのではないか。そもそもが他人ではないだろうか。昼どきにプラリと寄ると近所の中華食堂からタンメンの出前を取って食べているのではないだろうか。出前取る余裕あんのと心配させるのではないだろうか。その丼が翌日も翌々日も店の前に放置してあるのではないか。忘れられたにせよ返しにいくなり捨てるなりすりゃいいものをいつまでも放っておくのではないか。ああいう陰気なところがいかにも古本屋だよと同じ商店街の人々にもけむたがられてるのではないだろうか。すぐ戻りますと置き手紙して日中2時間近くも店をもぬけのカラにするのではないか。その間実は誰も来店してなかったのではないか。私の考える街の古本屋とは以上のようなものである。私に言わせりゃカワセミさんやる気出しすぎ。ブックオフ真空パック取り入れるって話じゃない。まいっチング。