ホロ苦い大人の味の焼はまなんである

 「女教師狩り」(82年にっかつ)をビデオで観る。先週から「犯され志願」、先々週には「女教師汚れた放課後」とレンタルし続けのゆきちゃん祭り。風祭。女優、風祭ゆきの魅力に中年期の今になって気付かされた感。大体ロマンポルノ時代の風祭ゆきの主なキャラクターといえば分別も教養もあるが男性関係は意外やあけすけに楽しんでいる。そんな自分が時々淋しくなる。ガラス窓に額をゴツンコさせて雨だれを数える。年中そんなことやってる女性像を終始演じ続けてきたように思える。80年代的なキャリアガールの表面化されにくい女のため息をほとんど一人で商品化し量産していたような感がある。十代、二十代の頃の私にはそんな風祭ゆき演ずるしなびかかった分別ある愛人キャラが好きになれなかった。時にはいとうせいこう張りに大人ってキタネーよなと拳を震わせたりもした。
 が、三十代も後半になり画面の中で風祭を都合よくむさぼりまくるキタネー男優と同年代になってしまった今正直にうらやましい。浮浪者同然の与太者にもサギ師にも妻子持ちにも分けへだて無く自らをさらけ出し与える中年解放区のような風祭ゆき出演作品。この歳になってしみじみと良い。
 「女教師狩り」は学園青春ドラマである。ドラマの肝心な部分は学園の外で起きる。若いカップルが夜のプールで裸で遊ぶオープニング。その場に居合わせた恋敵の同級生がその様子を強姦されてましたよと学校に密告する。カップルの男子生徒、大介はその事よりも当の相手緑が交際そのものの発覚を恐れて何も言わぬことに激怒する。強姦なんかやっちゃいねぇがもうこんな学校に嫌気がさしたと退学届けを叩きつけられる女教師が勿論風祭ゆき。勿論不倫している。そんな自分は棚に上げて教え子達のドロドロ恋愛劇をなんとかハッピーエンドにと奮闘するのだ。当時まだお茶の間に広まっていたアイドル主演の学園ドラマのロマンポルノ版といったところか。面倒見といった点では名取裕子より風祭ゆきだろうと今では思う。
 昔と今では女教師という看板の持つインパクトも大分違うが。ある時期には成人映画の題名に特定の業種をあてがって女○○師、女○○員などとつけるのは規制されていたはず。その頃にはそれがあまりにもハシタナイというか同じ仕事に付く女性に耐えがたい印象を与えていたのだろう。学園を飛び出した大介はヒッチハイクで海水浴場にも程近い温泉街にたどり着く。同じ頃女教師も不倫相手と同じ町の別荘にシケ込んでいて時期は丁度夏休みの始めである。ちょっとご都合主義かと思えば夏休みが終わる頃には大介と京子は和解し同級生とも互いに許し合う。そんな簡単に許し合えちゃうのか。無論簡単ではない。タイヤ処理場で片思いの緑に泣きながら追いすがり、ムームーひっちゃぶいてバカか何か平手打ち食う同級生。そのことを女教師に告げた緑が暗い眼で同級生にパクられ体液まみれにされて返って来たセーラー服を燃やしたり。どしゃ降りの雨の中校舎裏で大介にけしかけられ気弱な同級生が今度は本当に緑を強姦させられたり。三本締めのように大介が夜の浜辺で女教師を犯したり。私なぞはそうした悩める青春の通過儀礼的なネットリした見せ場にガツンときた過去があり今もしみじみ見入ってしまう。が、高校生の100人に1人はクラミジア持ちと報道される昨今ではどうか。別にそんな今の若者に女教師シリーズを観せてやりたい訳でもないが。親が風祭ゆきなんて統計も。