夜明けまで離さないんである

 1月26日、新宿コマ劇場にて「小林幸子新春特別公演」を観る。当日券で観ようと受付を見やればS席1万1千円はもう残少である。私はB席3千円を希望していたのでそれは気にならなかったがB席は完売している。するとA席6千5百円に決断する以外にないのでは。いや、夕方にももう1回公演はあるからそれまで待つか。
 しかしそれではこちらのテンションがゆるんで退屈してしまうような。そもそも私の目当ては歌の部のゲスト、南かなこだけなのだから。しかしその南かなこが3時間半のステージの内どの位舞台に立つのか私にはわからなかった。なんとなく不安にもなった。そしてええいままよとA席6千5百円のチケットを入手し会場に突入した私に不安は的中した。南かなこは一曲しか歌わなかった。小林幸子とのからみも無し。司会の青空キュートにプロフィールを紹介されて二言三言しゃべり投げキッスと共に舞台を去る。持ち時間は15分もなかったのではないか。
 「神秘と浪漫溢れる幸子ワールド」のほんのデザートというか居酒屋のお通しというか。新曲「木遣り恋唄」ただ一曲の為に6千5百円を払い3時間15分も待ったことになるのか。いやそうとは言えない。南かなこ見たさに伝統ある小林幸子のコマ劇場公演にのこのこ現れた私の方がどうかしているのだろう。こういう事態もあろうかと私は千秋楽前のこの日26日を選んだ気もする。つまり26日木曜の深夜には「走れ歌謡曲」で南かなこは2時間パーソナリティを勤める。コマが物足りなければそっちで楽しめればいいかと。それに昼には生で観ることができた南かなこトークを明け方には枕元で子守唄代わりになんてそれこそ粋でいなせかと。
 でも似た様なことを前にもしている気がしてすぐ思い出した。おりしも新宿。ニューアートの出演者の中にAV出身のタレントさんを見つけた私の帰途は自然と神保町の中古ビデオ屋へと急ぐ。そして当のタレントさんの旧作ビデオを買うと就寝前までそのパッケージは開封しない。酒を飲み酔いが回って人肌恋しさも頂点に達したその時にビデオのパッケージを食い破るようにしてそれを再生させる陰獣がそこに。そんなことするくらい好きならポラ写真撮らせてもらって握手と世間話の二言三言もするがいいと気付くのは陰獣が多少なりとも人間に戻り始めた夜明け前だ。
 何だ結局同じことをしているじゃないか。同じ愛し方。愛し方っちゅか、ねえ。ところで小林幸子も年齢の話になると「35歳ってところにしておいて」欲しいとか。八代亜紀と同じだ。35歳は女の花道か知らん。