尻馬にまたがるのが意外や大戦犯である

12月24日、シネマヴェーラ渋谷にて特集「官能の帝国ロマンポルノ再入門2〜バトンは受け継がれる」『3年目の浮気』を観る。83年にっかつ作品、監督は中原俊中原俊といえば昨今公開された『櫻の園』が記録的な大コケと中吊り広告でさらし者にされていたが。
自作のそれも唯一のヒット作品をリメイクするのもつらい仕事だろうからいっそ大コケもと思った。が、これで氏がまたもお布団かぶって寝ちゃうのかしらと思うと。リメイク作品が幕引きではいかにも淋しい。下り坂の中原俊にエールを送るつもりで『3年目の浮気』を。
ヒロシ&キーボーのヒット曲『三年目の浮気』を映画化した本作だがタイトルが「3年目」とあるようにヒロシ&キーボー側は協力していない。チョイ役で顔を出すこともミュージカル風に突然歌いながら画面をよぎることもない。『ザ・ベストテン』出演時の映像がクライマックスでつけっ放しのテレビの中で流れているだけである。
ヒロシ&キーボーにロマンポルノのイメージが似合わないという判断からであろうか。『三年目の浮気』以降のヒロシ&キーボーの売り方を今ではまったく記憶していないがヒットの最中にロマンポルノで映画化というのもありがた迷惑だったのかも。結婚三年目の若夫婦がそれぞれ浮気に走るがまた元のサヤにといったまんま歌謡映画なのだがこのイージーさが今では何だかおかしい。タイトルバックにて愛人関係にピリオドを打つ男女が去るラブホテルを背景にドーンと『3年目の浮気』とワケあり気な題名が浮かび上がると同時にあのイントロが流れるだけで何だかおかしい。ヒロシ&キーボーは出演したくないらしいという事情をジャンプ台にしたオープニングだとしたら。
脚本は森田芳光。この頃すでに『家族ゲーム』を発表しているから出世街道まっしぐらの中での闇バイトだろうか。いや同じ年に『ピンクカット太く愛して深く愛して』も監督している。思えば『家族ゲーム』も当時はメジャー感あまりなかったような。あの頃何がメジャーだったかといえば角川映画のアイドルものやジャパンアクションクラブがらみの活劇か。二本立興行というのもまだ健在だった。
ポテンヒットで上等と世に送り出される若手監督が当時はたくさんいたわけで今にしてみれば幸福な時代のようにも思える。80年代ブームに火をつけたがっている映画人は数多いかもしれないが誰も火をつけたがらない本作のようなところから火がついてしまう気もしないでもない。アーティスト側の協力を得られなかったやけくそ気味の歌謡映画を私は勝手に追跡開始。