未だに『シブヤで会いたい』んである

6月12日、シネウェーブ渋谷にて「活弁上映会『浪人街』」を観る。弁士は佐々木亜希子氏。彼女の活弁上映会を追いかけていたのはもう3〜4年前にもなるのだろうかと。私がフォローする女性アーティストは必ず落ち目になるという悲しきジンクス通りに弁士、佐々木亜希子もまた講演先のクローズに何度となく直面し一般向けの情報誌ではどこでどうしているのやら確認できなくなっていたが。
今回久し振りに出かけた上映会で配布されたパンフによればその後もNHKの番組キャスターを務めるなど調子を取り戻しつつあるらしい。だったら少しは遠慮しろいこの厄病神と自戒しつつなるべく彼女に気づかれないように会場の片隅に身を縮めるようにして開演を待つ。
黒のスーツに黒のストール、ピッチピチのパンタロンとは今時言わないのだろうがケンカ上等風の丸の内OLがよく穿いている肉感的なパンツルックで登場する佐々木亜希子氏。会場はどよめきはしなかったが考えてることは皆同じというか。まずはあいさつを始める女史のちょっとしたトチリや冗句に我先にからもうとする助平親父、いや、熟年の時代劇ファンの歓声が上がる。
その後も機材のトラブルがあり余計にいじられる態勢にはなったがクールな語りと仏頂面で見事に切り抜けた。一皮むけたというかタフになったというか。やはり俺がフォローしなくなると伸びるしフォローすれば仕事がなくなるのが自然界の原理なのかと痛感しつつも拍手を送る。活弁がもっとも盛んであった昭和初期にはスター俳優にも負けない人気を集めるスター弁士もいたそうでしてともじもじ語る女史。ま、はっきり言って彼女だけが現代のスターである。彼女以外の弁士はタレント性出せば出すほど客は引く。村おこしイベントで猥雑なアトラクションを必要以上に明るく陽気に演じる地域ボランティアのような有り様に今時の活動弁士は十中八九陥ってしまう。女史は陥らない。女史には始めから猥雑でビビットなタレント性があるからかもしれない。
なんだか顔のキレイなオカマに対抗して不細工なオカマが股間に電気掃除機を吸いつけて強引に客の気を引くような壮絶な椅子取りゲームが活弁の世界にもあるような気がしてきた。今のところは活弁界のキューティー鈴木のような女史がこのまま生き残れるかどうか。厄病神である私が今後も女史の周りをウロチョロしていて良いのかどうか。シネウェーブでの講演はもう6回目になるという。7回目にも8回目にも祈りを込めてひたすら通いたいような男のケジメがあるような。