私の記憶の中の最もピンピンの

8月27日、この夏の一番の思い出はなどと問われても勿論バカンスめいた出来事は何もなかったのだが。少しは夏休みらしいネタを掘ってみようかとツタヤで『ゲゲゲの鬼太郎60S』を借りる。68年放映の白黒作品で制作はフジテレビ。私の手元に08年放映の鬼太郎のテーマ曲のCDがある。演奏するザ50回転ズとおまけのトークでからむのは鬼太郎役の高山みなみ目玉おやじ役の田の中勇だが。68年におやじ役だった田の中勇は08年にはいったい何歳なのだろうかと。私の記憶の中の最もピンピンの目玉おやじといえばやはり70年版のカラー作品のおやじである。関連書籍を読みあさって知った原因不明の奇病で目玉化してしまったエピソードには震えた。当時の児童向けの科学読本やネイチャー図鑑には実際に社会問題化した現代の奇病、公害病をホラー読み物として仕立てたキワモノが多かった。『ゲゲゲの鬼太郎』もその流れの中にあったのは「現在では不適切な表現」の連発からもうかがえる。鬼太郎ハウス同様の廃屋は田舎で暮らしてみれば珍しくない。いや初めは珍しくそうした建物に忍び入り見知らぬ遺影と向き合ったりもした。半年もするとそれらはお化け屋敷としての魅力を失って見える。都心から移り住んで一年たつというご近所さんなどは放ったらかしの行政に腹が立つという。私もいずれそう思うようになるのだろう。だとすればディスカバー・ジャパン気分で野山を散策していられるのも今のうちということか。70年代初めの青年誌なぞお化け屋敷の中で読みふけるのは少年時代にタイムスリップできそうだ。が、それにも飽きたら後はひたすらムカっ腹を立てて地の利のなさを呪うのか。いやいっそのこと古くからの友人知人などいないこの土地でまったくこれまでとは
違う自分になりすますのはどうか。近所にハワイアン系のカルチャー教室があって周辺の若い主婦がフラダンスを習っている。スチールギターウクレレなども指導しますよと看板にある。ハワイアンに大変な興味のあるフリをして教室にもぐり込むのは簡単だが。すぐに『シャルウィーダンス』のように美人講師のお尻を追いかけにやってきた呆れた若年寄と非難を浴びるだろう。駅前ロータリーには毎週末にケロヨンの扮装で鉄鍋をぶら下げて立ちんぼする50代くらいの男性がいる。鉄鍋に小銭を放り込む通行人もいるが別にケロヨーン、バハハーイなどと芸を見せたりはしない。何でそんなことをしているのか事情を知る人はいないらしい。私が来年の今ごろ怪獣ブースカの扮装でケロヨン氏と共闘していないとも思えず。