時代の波に乗れない未開人でだる私に

2月2日、曽我部恵一の『6月の歌』(13年 ROSE RECORDS)を聴く。アルバム『超越的漫画』からの先行シングルでカップリングの『コーヒーとアップルパイ』はアルバム未収録。これで¥500はお得だが何だか心配にもなる。大手レコード会社も倒産していくここ最近の現実は私には銀行の倒産よりも危機感がつのる。音源なんてわざわざ買う必要ない、どこにいても手元に引き寄せられるから今にCDショップも街から消えるという大方の予想は当たりつつある昨今は尚更不安である。ダウンロードした音楽に初めて触れたとき私がついて行けるのはCDまでかと予感した。時代の波に乗れない未開人である私にもワンコインで新曲を届けてくれる曽我部恵一にはつくづく頭が下がる。『6月の歌』は音数も少なく音響効果もさほど手を加えずシンプルに仕上げられたまるで喫茶ロック。70年代のマイナーフォークの音源とほぼ同じサウンドが再現されているのは機材が貧弱なのかヴィンテージな年代物の機材に設備投資しているのか。そんな本作が銀座の山野楽器のおすすめコーナーに並んでいるのも不思議な気がした。「雨の朝も風の夜も/きみはとってもがんばってる」という『6月の歌』の歌い出しは何だか痛々しい。病気見舞いに行ってみた友だちが想像以上に衰弱していたときのような。「なれないことや苦手なことも/きみはひと頃流行ったフレッシャー向け人生応援歌と視点は同じだが語り口は一味違う。やはり曽我部恵一の語りかけは独特なのだ。『6月の歌』になぐさめられるほどがんばってもいなければよくやってもいない私が一人勝手に思い描く『超越的漫画』は題して『フーミンの幸せ』。去年の暮れからやれ生活保護寸前だのAV出演交渉中だの危機感つのる話題ばかりのフーミンが私はときどき心配になる。なるが今更ギルガメ出演時のテンションでお茶の間に復帰してくれることを期待する方が酷というものかと。それを言うならもう絶対復帰できない飯島愛のことはどう思っているのかと。フーミンとは不仲で有名だったからこの際忘れようというのか。「もうどうしようもないことばかりがこの星を包む」、『コーヒーとアップルパイ』の中の一行に賛同の拍手を送るというのはどうも変だ。それではいかにもやけっぱちの未開人だ。けれど濡れた毛布にくるまり山雨の中を徘徊しているような本作のダルな世界観に私は今しばらくはとどまっていたいのだ。そしてもう一度考えてみたい。『フーミンの幸せ』を。