いじられキャラのまま30年もいじられ

2月11日、蛭子能収 著『ひとりぼっちを笑うな』(角川ONEテーマ21)を読む。本書は漫画家で俳優業、タレント業もこなす蛭子さんによる人生指南書である。あの蛭子さんに人生指南書を授かりたい人間なんて世の中にいるのかと思う。が、普通の人間が超一流…

と、いうストーリーだけ書き出すと

2月22日『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)を読む。本書は06年10月から09年12月のあいだにアフタヌーン誌上にて漫画家、市川春子が一話完結で発表してきた作品を一冊にまとめたもの。収録作は表題作の他に『星の恋人』、『ヴァイオライト』、『日下兄弟』…

公開当時にはなんだかなあとも

12月16日、『あ、春』(98年トラム)をDVDで観る。監督、相米慎二。01年に死去した相米慎二の遺作は本作の次に撮った『風花』(01年ビーワイルド)である。が、『風花』は劇場で一度観たきりDVDで観返す気がしない。何やら具合の悪そうな映画だと私は…

果たしてその回答はただそのままで

12月9日、『深沢七郎ライブ』(話の特集編集室)を読む。本書は作家の深沢七郎が87年に死去した翌年に親交のあった雑誌『話の特集』の編集者、矢崎泰久を中心に限定出版されたもの。その内容は随筆と対談のベストセレクション、色川武大、尾辻克彦、野坂昭如…

しかし、ふがいないといえば

12月3日、青山円形劇場にて『夕空はれてーよくかきくうきゃくー』を観る。作=別役実、潤色・演出=ケラリーノサンドロヴィッチとチラシやパンフにはクレジットされている。潤色というのは色どりを添えるなどの他に事実どおりでなく面白くするという意味があ…

安藤サクラならもらえるものは

11月29日、有楽町スバル座にて『0.5ミリ』(13年 ZERO PICTURES/REALPRODUCTS)を観る。監督、脚本 安藤桃子。本作の主人公山岸サワを演じるのは監督の実妹でもある安藤サクラ。エグゼクティブ・プロデューサーに奥田瑛二、劇中登場する手料理を監修するフー…

着くなり夜飯は生ものだから早く

10月19日、藤原新也 著『日本浄土』(東京書籍)を読む。本書は写真家でありエッセイストでもある著者が04年から08年までに雑誌『coyote』などに残した紀行文を単行本化したもの。著者は70年代初めからこの時点で三十年近くも地球のいたるところへ旅し…

映画の方はよくてもB級扱いの

10月11日、あがた森魚・大瀧詠一『僕は天使ぢゃないよ』(KING RECORDS)を聴く。本作は75年に“あのデニス・ホッパー『イージー・ライダー』に触発されてあがたが制作、監督、主演した同名映画のサントラ”なのだが映画をDVDで観たかぎりそれが…

コミさんは当時そちら側でこんな風に

10月9日、金子光晴対談集『下駄ばき対談』(現代書館)を読む。95年に詩人、金子光晴の生誕百年を記念して刊行されたはずの本書。内容は70年代初めから半ばまで週刊誌上などで金子光晴が繰り広げてきた対談をまとめたもの。ゲストは野坂昭如、寺山修司、岸恵…

何だかんだと実は皆一様に育ちの良い

9月30日、早川義夫 著 『生きがいは愛しあうことだけ』(ちくま文庫)を読む。本書は歌手、早川義夫が05年から14年初めまでにあちこちの出版物やサイトに寄稿した文章をまとめたもの。内容は近年死別してしまった音楽仲間たちへの追悼文、奥さんや恋人との生…

が、この時代には近所の評判は

8月8日、ねじめ正一 著『高円寺純情商店街』(新潮文庫)を読む。詩人のねじめ正一が昭和の終りにとっかかり平成の初めに発表にこぎつけた処女小説であり直木賞受賞作。本作は昭和30年代半ばの東京、高円寺北口に面する純情商店街を舞台に主人公の正一少年の…

徹底した少数党派で好き者同士

7月30日、『盲獣』(69年大映)をDVDで観る。監督、増村保造。江戸川乱歩の原作小説をたったひとつのセットとたった3人のキャストで大胆に脚色した意欲作。公開当時はその意欲への反響は乏しかったようだが現在は増村作品のなかでも特にカルト的人気が高…

裏でこそこそ中傷し合うから問題は

7月27日、森達也 著『いのちの食べかた』(角川文庫)を読む。ドキュメンタリー映画界で数々の賞を受賞している映像作家の森達也が食肉をテーマに04年に出版した著書を文庫化したもの。本書の語り口は著者が小学生以下の学童にもわかるようにふり仮名付でや…

ニューヨークから視たアジアのキラ星

7月13日、池袋HUMAXシネマズにて『私の男』を観る。監督、熊切和嘉。熊切監督は去年『夏の終り』と『莫逆家族 バクギャクファミーリア』が公開されていてかなりのハイペースぶり。本作主演の二階堂ふみは第13回ニューヨーク、アジア映画祭でライジング…

懐かしいその筆跡を初めて見たのは81年

6月13日、忌野清志郎 著『ネズミに捧ぐ詩』(KADOKAWA)を読む。“執筆から26年、四半世紀を経て、永遠のブルースマンが贈る待望の新刊”と帯にある通り88年頃に忌野清志郎が記していた創作ノートをまとめたもの。各段落ごとにノートからまま拾い上げ…

堂々としたタイトルだが67年といえば

6月9日、『日本一の男の中の男』(67年東宝)をDVDで観る。監督、古澤憲吾。堂々としたタイトルだが67年といえば人気シリーズもそろそろ中弛みか。全盛期を過ぎたバンドがアルバムタイトルにバンド名を冠するようなものか。クレージーキャッツからも谷啓…

最後に笑うのはやはりこまどり姉妹

5月31日、こまどり姉妹の『こまどりのラーメン渡り鳥』(コロンビア)を聴く。今年デビュー55周年になる御大こまどり姉妹の18年ぶりの新曲である。本作はタイトルが示すとおりこまどり姉妹の1963年の小ヒット『涙のラーメン』をモチーフにしたもの。80年代半…

まずおどろいたのが出演者全員の粗暴

6月4日、寺山修司ラジオドラマCD『いつも裏口で歌った』(05年キングレコード)を聴く。1961年、ニッポン放送『ラジオ劇場』にてオンエアーされた30分のラジオドラマをCD化したもの。ディレクターは当時ニッポン放送の社員だった倉本聰で解説文も寄せて…

最後に笑うのはやはりこまどり姉妹

5月31日、こまどり姉妹の『こまどりのラーメン渡り鳥』(コロンビア)を聴く。今年デビュー55周年になる御大こまどり姉妹の18年ぶりの新曲である。本作はタイトルが示すとおりこまどり姉妹の1963年の小ヒット『涙のラーメン』をモチーフにしたもの。80年代半…

そんないじめられっこバンドならば

4月11日、『PYG ゴールデン・ベスト』(ユニバーサルミュージック)を聴く。71年にジュリーとショーケンがタッグを組んだスーパーバンドとして知られるPYGの音源に触れるのはこの廉価盤ベストが初めて。PYGが当時の音楽シーンでは“GSの残党がニュ…

もう少しソフトな過去の出演作は

4月9日、『遠雷』(81年にっかつ撮影所 /NCP/日本ATG)をDVDで観る。監督、根岸吉太郎。現在都内の劇場では先だって亡くなった蟹江敬三の追悼特集など企画中なのでは。しかし蟹江敬三という俳優はそのキャリアの半分近くを壮絶な汚れ役ばかり演じてきた。…

そんなことを馬鹿正直に語る人物も

4月4日、山田太一 著『月日の残像』(新潮社)を読む。本書は著者が季刊誌『考える人』に05年冬号から13年夏号まで9年間連載したエッセイを単行本化したもの。1934年生まれの著者の七十代がほぼすっぽり収まった35編のエッセイの中で印象的なのは第4回の『減…

会場で唯一夏服で汗みずくの大江は

3月16日、下北沢CLUB Queにて大江慎也&ザ・カッターズと、ザ・プライベーツのジョイントライブを観る。下北沢CLUB Queは地元商店街の雑居ビルの中にある生活臭がかつての渋谷ライブインを思い出させる。渋谷駅前にありながら会場にたどり着くにはビル内の青…

なかにし礼はその何かを大奥に

2月4日、なかにし礼 著『歌謡曲から「昭和」を読む』(NHK出版新書)を読む。作詞家、なかにし礼が「ヒットメーカーにしかわからない感覚」で昭和歌謡の誕生から終焉までを検証する。本書のなかで私が面白く読んだのは後半にきて段々なかにし礼の作詞教室…

時代の波に乗れない未開人でだる私に

2月2日、曽我部恵一の『6月の歌』(13年 ROSE RECORDS)を聴く。アルバム『超越的漫画』からの先行シングルでカップリングの『コーヒーとアップルパイ』はアルバム未収録。これで¥500はお得だが何だか心配にもなる。大手レコード会社も倒産していくここ最近…

間違いなく傑作なんだろうなと思いつつ

1月17日、丸尾末広の『パノラマ島綺譚』(08年エンターブレイン)を読む。江戸川乱歩の原作小説を“日本漫画界が世界に誇る魔神・丸尾末広が、長き沈黙から覚醒し、満を持して挑むは”第13回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した本作である。間違いなく傑作なんだろ…

あれはある種の異常行動だったかと

1月7日、NHKラジオ深夜便で耳にして久しぶりにしびれた野口五郎の新曲『でも好きだよ』(エイベックス・マーケティング)を聴く。本作は『いとしのレイラ』を七五調でぼかしたような仕上がりの典型的歌謡ロックである。が、J−POP以降そんなありがちだ…

衾秋江は西村作品のドル箱スターに

12月19日、西村賢太『寒灯・腐泥の果実』(新潮文庫)を読む。表題作の他に二篇を加えた四つの短編は全四話の連続ドラマといった感。全編通して登場人物はほぼ北町貫太と同棲相手の秋江のみ。ロケーションは滝野川のマンション周辺。たまに足を伸ばしても白…

と、いうよりこのタコ部屋が進化した

12月17日、末井昭『自殺』(朝日出版社)を読む。2011年5月から「朝日出版社第二編集部ブログ」にて“面白く読める自殺の本を”との呼びかけに応じて著者が月一回連載してきたもの。著者、末井昭は『写真時代』、『パチンコ必勝ガイド』などを創刊した名物編集…

本作は戸川純芸能生活十周年を記念

12月14日、戸川純の『昭和享年』(89年テイチクレコード)を聴く。川越美和の『どうぞこのまま』に少しばかり胸が震えたもののやっぱりカバーといえば戸川純だよなと思いつつ。本作は戸川純芸能生活十周年を記念して制作された昭和歌謡(当時は懐メロと呼ば…