が、今になってあの世にもサウンドが

5月17日、BABYMETAL のアルバム『METAL RESISTANCE』 (トイズファクトリー)を聴く。FMラジオにて全米40位内に入る『スキヤキ』以来の快挙と紹介された本作に少なからず反応した私はその足でCDショップに走った。私がそれ以前ショップに走ったのは椎名林檎の…

人生に弱ってる時にフトらくがきして

5月10日、おくやまゆか 著『たましい いっぱい』(株式会社 KADOKAWA)を読む。本書は月刊コミックビームに掲載された著者のマンガを初めて一冊にまとめた「破格の処女単行本」。マンガ以外にも絵本作家、挿絵画家として活動する著者は本書で第19回文化庁メ…

それでもけだし名曲は名曲である

5月5日、なぎら健壱『ベストアルバム 中毒』(95年 FOR LIFE)を聴く。本作はフォークシンガーのなぎら健壱が73年から95年までに残した音源の中からお笑い寄りの企画盤を中心に編集したもの。“再発発起人”として高田文夫がクレジットされている。そもそも高…

この珍事を見逃さない編集者の眼力に

3月1日、山田太一 著『S先生の言葉』(河出文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一がこれまで新聞雑誌等に発表してきたエッセイの中から企画・編集をフリーの編集者に委ねたベストセレクションのこれが第一弾。まえがきには「私はいま八十一歳で、一応おだや…

この珍事を見逃さない編集者の眼力に

3月1日、山田太一 著『S先生の言葉』(河出文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一がこれまで新聞雑誌等に発表してきたエッセイの中から企画・編集をフリーの編集者に委ねたベストセレクションのこれが第一弾。まえがきには「私はいま八十一歳で、一応おだや…

そのアットホームな様子にほっとする

2月9日、新宿K's cinemaにて『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』(15年 シネフィルム)を観る。監督、遠藤ミチロウ。本作は11年3月初めに遠藤ミチロウの還暦記念ライブツアーを収録したDVDの中のミニドキュメントとして制作開始された…

へなちょこでいいのだと言いたい

2月7日、つげ忠男 著『成り行き』(ワイズ出版)を読む。本作の著者、つげ忠男はつげ義春の実弟にあたる。兄、つげ義春のようにブームに巻き込まれることもなく断続的に描き続け固定ファンを抱えている。本作は56年以上にもなるその活動の集大成になるかもし…

伊藤克信が全篇いい味出し過ぎの

1月25日、新宿ピカデリーにて『の・ようなもの のようなもの』(16年松竹)を観る。監督、杉山泰一。本作は11年暮れに急死した映画監督、森田芳光の出世作『の・ようなもの』を弟子にあたる杉山監督が同じく森田組出身の堀川正樹の脚本でリメイクしたもの。3…

言わば日本の「青春」は明治生まれで

12月14日、金子光晴 著 『現代日本のエッセイ 絶望の精神史』(講談社文芸文庫)を読む。本書は1965年、昭和40年に明治百年、戦後二十年と呼ばれひと段落した時代的気分のなかで詩人、金子光晴が七十年の人生と世相を照らし合わせ振り返ったエッセイ集。当初…

その不思議はもう少しそのままにして

12月20日、町あかり『もぐらたたきのような人』(ビクターエンタテインメント)を聴く。今年の夏に新宿のディスクユニオン昭和歌謡専門店にてアルバム『ア、町あかり』のフライヤーを入手して以来その存在はずっと気がかりではあった。町あかりというその新…

溢れる不安と不満をぶつけていいのは

12月12日、サレンダー橋本 著『恥をかくのが死ぬほど怖いんだ。』(小学館)を読む。本書はWebメディア『オモコロ』に14年7月から12月まで更新された著者の漫画を初めて単行本化したもの。帯文に“えっ…このマンガ、サブカルをバカにしてる!?許せません!渋…

うんことおしっこは生きる上での基本

12月8日、谷川俊太郎 文 井上洋介 絵 『たべる』(06年 アートン)を読む。“この絵本、食べすぎにききます、ダイエットにもなります”というキャッチの通り井上洋介の生々しい人物描写と谷川俊太郎のえげつなくも可笑しい終末観による正しく“迫力の一冊!”主…

けれどその点は百も承知と思われる

10月13日、茨木のり子 作 山内ふじ江 絵『貝の子プチキュー』(福音館書店)を読む。本書は詩人 茨木のり子が生涯において唯一残した絵本の仕事として知られている。が、もともとは茨木のり子が放送作家時代に書いたラジオドラマの脚本を絵本向きに再構成し…

勿論一般のお客様にも応援して欲しい

9月24日、史群アル仙 著『臆病の穴』(秋田書店)を読む。本作は秋田書店コミックサイト『Championタップ!』に14年11月から15年5月まで連載された。“ノスタルジックな絵柄で、人間の心の深層を抉る「愛」の短編を14本収録”と裏表紙にある通り吾妻ひでお風の…

このマンガはスゴイのかも知れないと

9月20日、阿部共実 著『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』(秋田書店)を読む。帯には“宝島社 このマンガがすごい!2015第一位オンナ編”とあり前作『ちーちゃんはちょっと足りない』で注目を浴びた著者の初の作品集になる。私はその『ちーちゃんは……

といっても母娘で食い物にされたのは

9月14日、山田太一 著『読んでいない絵本』(小学館文庫)を読む。本書は脚本家の山田太一が89年から08年までに発表した短編小説、舞台の戯曲、ドラマの脚本などを収めたもの。表題作『読んでいない絵本』を始め三作の短編小説はいずれも心理ホラー的要素の…

かしぶち哲郎作詞作曲によるこの曲を

7月25日、岡田有希子『All Songs Request』を聴く。本作はアイドル歌手、岡田有希子が残していった全ての音源の中からファン投票により選曲された17曲を収録したもの。ユッコといえば竹内まりやによるデビューからの三部作、『ファースト・デイト』、『リト…

働く女性に贈る知的エンタメ漫画と

7月20日、よしながふみ 著 『愛すべき娘たち』(白泉社)を読む。本作は『メロディ』誌に02年7月号から03年10月号まで不定期に掲載されたコミックス。大人の女性向けコミックスと呼べばよいのか。私の感覚からすればレディースコミックというものは性描写の…

70年組の青春はいま少しそっとして

7月15日、クリス松村 著『「誰にも書けない」アイドル論』(小学館新書)を読む。本書はアイドル歌謡の解説者としても知られるタレントのクリス松村が70年代末から80年代末を中心に展開するアイドル論。著者がアイドル歌謡に異常に詳しいことは以前から知っ…

今後に充分な警戒が必要である

7月9日、中崎タツヤ著『もたない男』(新潮文庫)を読む。本書は漫画家、中崎タツヤが自らの行き過ぎた断捨離癖を赤裸々に告白したエッセイ集。自作の漫画同様に物腰やわらかにぼそりぼそりとありていの日常を語っているかに見えてよくよく聞けばかなり異常…

その割に表立った交流があまりないのは

5月9日、谷川俊太郎 対話『やさしさを教えてほしい』(朝日出版社)を読む。本書は81年に奥川幸子、中島みゆき、永瀬清子、ぱくきょんみ他6名の女性と谷川俊太郎との対話をまとめたもの。それぞれソーシャルワーカー、シンガーソングライター、詩人と立場は…

最早吹けば飛ぶような劣化状態にある

5月3日、山下浩 監修、椹木野衣 解説『山下清 作品集』(河出書房新社)を読む。本書は「放浪画家」「裸の大将」として知られる山下清(1922―1971)の残した貼絵、油絵、ペン画などの作品群と放浪日記の一部を収録した山下清ワールドへの入門書である。「テ…

ほぼ一年がかりで本書は生まれた

4月17日、吉田日出子『女優になりたい』(晶文社)を読む。本書は女優、吉田日出子が93年に40歳を目前にこれまでの女優業を振り返る語り下し。その語りを構成したのが同じ演劇人の津野海太郎を始めとする晶文社のスタッフ。ほぼ一年がかりで本書は生まれた。…

ネタを生きながらも自己流に再編集

4月14日、いがらしみきお著『今日を歩く』(小学館 IKKI COMIX)を読む。著者が今日まで15年以上も続けてきた散歩を通じて「日常を哲学するエッセイコミック」である。著者の過去作と比べるとちょっとした新境地の感。パワー全開の大ネタとしては本書と同じ…

何だか蛭子さんに似てるなと思ったが

2月18日、横尾忠則 著『温泉主義』(新潮社)を読む。本書は画家、横尾忠則が05年11月より07年12月まで雑誌に連載していた紀行文を一冊にまとめたもの。そもそもが温泉嫌いだった著者が仕事がらみで銭湯協会にかかわった際に「銭湯の次は温泉に行って、それ…

グランドホテル形式と呼ばれる作劇を

2月3日、テアトル新宿にて『さよなら歌舞伎町』(14年 映画「さよなら歌舞伎町」制作委員会)を観る。監督、廣木隆一、脚本、荒井晴彦。新宿歌舞伎町のとあるラブホテルを舞台にそこで働く人々、訪れる客、性風俗関係の仕事を持ち込む常連客らのそれぞれ複雑…

いじられキャラのまま30年もいじられ

2月11日、蛭子能収 著『ひとりぼっちを笑うな』(角川ONEテーマ21)を読む。本書は漫画家で俳優業、タレント業もこなす蛭子さんによる人生指南書である。あの蛭子さんに人生指南書を授かりたい人間なんて世の中にいるのかと思う。が、普通の人間が超一流…

と、いうストーリーだけ書き出すと

2月22日『虫と歌 市川春子作品集』(講談社)を読む。本書は06年10月から09年12月のあいだにアフタヌーン誌上にて漫画家、市川春子が一話完結で発表してきた作品を一冊にまとめたもの。収録作は表題作の他に『星の恋人』、『ヴァイオライト』、『日下兄弟』…

公開当時にはなんだかなあとも

12月16日、『あ、春』(98年トラム)をDVDで観る。監督、相米慎二。01年に死去した相米慎二の遺作は本作の次に撮った『風花』(01年ビーワイルド)である。が、『風花』は劇場で一度観たきりDVDで観返す気がしない。何やら具合の悪そうな映画だと私は…

果たしてその回答はただそのままで

12月9日、『深沢七郎ライブ』(話の特集編集室)を読む。本書は作家の深沢七郎が87年に死去した翌年に親交のあった雑誌『話の特集』の編集者、矢崎泰久を中心に限定出版されたもの。その内容は随筆と対談のベストセレクション、色川武大、尾辻克彦、野坂昭如…